ファンタジーと冒険と恋心・全てを味わえるハイブリッドな物語【空色勾玉】

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くまた

ファンタジー小説が好きな方はもちろん、困難を乗り越えて頑張るお話が好きな方、初めて恋をする話が好きな方におすすめの本です。
ハラハラドキドキの冒険と、キュンとする恋心の物語ですので、ファンタジー小説が初めての方でも楽しめます!

この【空色勾玉】(そらいろまがたま)はファンタジー小説であり、恋愛小説でもある。

日本の古代神話をモチーフに、争い合う二つの勢力のそれぞれに生まれた女の子と男の子が出会い、一緒にいろいろな経験をすることで絆を深め、「いつまでも一緒にいたい」という気持ちを持って世界を変えようとする物語。

古代神話の時代が舞台なので画数の多い漢字が出てきたり、今の時代では使わない言葉なんかも出てくるけど、全ての漢字と難しい言葉には振り仮名を振ってくれているので読みにくいということは無し。

漢字以外の部分はとてもわかりやすい言葉ばかりなので、気負いなく読み進めることができると思う。

実はこの本、児童文学のジャンルになっているけれど、このお話を子ども向けだけにしてしまうのはもったいない。

子どもだけじゃなく、大人にも読んでほしい。

出会いと別れ、冒険、恋愛、自分たちではどうしようもできない理不尽なこと、それに立ち向かおうとする心、いろんな要素が詰まったとても美しい物語だから。

目次

【空色勾玉(そらいろまがたま)】のご紹介

【空色勾玉】のデータ

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題名:【空色勾玉】(そらいろまがたま)
著者:荻原規子
初出:1988年
出版元:徳間書店

この本は荻原規子さんのデビュー作であり、第22回日本児童文学者協会新人賞受賞作(1989年)。

著者の荻原規子さんが書いた、勾玉3部作または勾玉シリーズと呼ばれる3作のうちの最初の本が、この【空色勾玉】。

他の2作の【白鳥異伝】(はくちょういでん)と【薄紅天女】(うすべにてんにょ)もとても面白い本なので、いつかご紹介したいと思う。

【空色勾玉】の世界

【空色勾玉】はイザナミ・イザナギの神の国産みのエピソードや天照大御神などの、日本の古代神話をモチーフにしたファンタジー小説。

不死の神様を支える勢力と生まれ変わりを信じる人たちとの間で、長く争いが続いている世界に女の子が生まれる。

女の子は自分は他の子と変わらない普通の子だと思って暮らしてきたのだけれど、ある時、特別な役目を持っていた巫女の生まれ変わりだと告げられる。

生まれ変わりの証拠である特別な勾玉を託された女の子は、巫女として生きていくべきだと教えられるんだ。

でも、女の子は自分がそんな特別な存在であることが信じられないし、巫女なんて知らない、と巫女になることを拒否する。

それまで女の子が生きてきたのは不死の神様がいる世界で、生まれ変わりなんて信じられないし、信じてしまうと今までの自分を否定することになってしまうと思うんだね。

そんな彼女の前に現れたのが、ずっと閉じ込められていて外の世界を知らない不死の神の弟。

彼は女の子の敵である存在なんだけれど、なぜか女の子は彼を嫌うことも憎むことも、彼と争うこともできない。

女の子と彼には、深い結びつきがあったから。

でも、出会ったばかりの二人にはそれはわからない。

女の子は彼と一緒に外の世界へ飛び出していく。

自分がなぜ巫女の生まれ変わりと言われるのか、なぜ彼が閉じ込められていたのか、長く続く争いはなぜ起きたのか、そのすべてを知るために。

【空色勾玉】を読んで思ったこと

「きみといつまでも一緒にいたい」という気持ちが全ての始まりになる

このお話は、「君といつまでも一緒にいたい」から始まる小説だと思う。

設定は古代の日本神話をモチーフにしていて、対立する二つの勢力の争いや人知を超えた能力を持つこととか、いろんな面白い要素はあるんだけど、根底にあるのは運命の人と出会い、生きていく奇跡だと思う。

そして、自分自身を受け入れること。

主人公の女の子は、ずっと自分のルーツから目を背けていたんだよね。

それは両親を戦乱で亡くすという経験がある彼女にとっては仕方ないことでもあったんだけど。

自分のルーツを見つめなおし自分を受け入れた時に、運命の人と出会う。

ところが、運命の人と出会ってもすぐにハッピーエンドとはならない。

運命の人もまた、自分自身を知らないんだ。

女の子とはまた違った意味で、彼は自分を受け入れることができていないんだよね。

そして女の子と彼は、敵同士。

もうこの時点で、一緒に生きていくことは難しい。

それでも二人は、一緒にいろいろな試練を乗り越えることで絆を深めていく。

命の危険にもあう。

一緒にいられることが当たり前じゃない、苦しい世界の中で、一番の支えは「君といつまでも一緒にいたい」という気持ち。

主人公の女の子と運命の人だけじゃない。

他の出てくる人たちの気持ちの奥底にも、同じ気持ちがある。

「君といつまでも一緒にいたい」

その気持ちを受け入れるため、受け入れてもらうためにそれぞれが行動していることが、時に争いを生み、お互いを傷つけてしまうこともある。

それをどう乗り越えていくのか。

そこはやっぱり、お互いを思う気持ちなんだよね。

主人公の女の子と運命の人の深い結びつきが、たくさんの人を変えていく。

争うことしかできなかった世界が、お互いを誤解して反発していたたくさんの人たちが、変わっていく。

そして、女の子と運命の人も変わっていく。

自分を信じられなかった女の子が、自分を知らなかった運命の人

「君といつまでも一緒にいたい」

そんな純粋な気持ちが、全てを始める原動力になり、変わらないと思っていた世界を動かすんだなあ、と思う。

【空色勾玉】はファンタジー冒険小説と恋愛小説のハイブリッド本

【空色勾玉】は、ファンタジー小説であり、冒険小説でもあり、恋愛小説でもある。

ファンタジーと冒険を恋愛が見事に重なり、繋がり合って紡がれる物語。

ファンタジーは苦手だなって人には冒険と恋愛の部分を、恋愛小説は苦手よって人にはファンタジーと冒険の部分を、どれも全部好きだって人には、全てをひっくるめておすすめしたい。

普段はファンタジー小説を読みません、という人も、ぜひ一度手に取ってみて。

「空色勾玉」にはドキドキハラハラの物語と、キュンとする恋と、美しい言葉がつまっているから。

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